スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【参考判例】 

 路上に停止して右折待ちをしていた車両(普通車)と直進車(バイク)との衝突事故で、普通車側が起訴され無罪となった事案です。
 裁判所の判断(無罪の要件)は、本件の弁護側の主張を検討する際の参考になると思います。

平成18年9月25日 東京地裁 判決
平18(刑わ)1463号
業務上過失傷害被告事件

1 本件公訴事実の要旨
(略)
2 認定事実
(1) 関係各証拠によれば、以下の事実は十分認定することができ、これを覆すに足りる証拠はない。
〈1〉 公訴事実記載の交通事故(略)の発生現場は、発生現場は、東西に走る幅員約4.9メートルの道路(略)と南北に走る幅員約16.55メートルの片側2車線の道路(略)が丁字型に交差する信号機により交通整理の行われていない交差点(略)である。東西道路の本件交差点手前には一時停止の道路標識が、(南北道路)の本件交差点内には車両通行帯がそれぞれ設置されており、(南北道路)が優先道路となっている。本件事故当時は晴天で、アスファルト舗装された(優先道路)の路面は乾燥状態であった。
〈2〉 被告人は、本件事故当時、自己が運転する(普通自動車で)本件交差点に差し掛かり、右折の合図を出した上、上記〈1〉記載の一時停止標識の手前で一時停止をした。そして、本件交差点手前の横断歩道上に歩行者がいなかったことから、徐行して前進し、(優先道路)の左右を確認できる地点で再び一時停止した(以下、この地点を「2回目の一時停止地点」という。)。
〈3〉 その後被告人は、2回目の一時停止地点で、(優先道路)の左右方向から本件交差点に走行してくる車両が途切れ、右方(略)から本件交差点に向かって走行してくる車両が存在しないことを確認した後、右折するため被告人車を発進させ、本件交差点に時速約5キロメートルで進入したところ、左方(略)から車両が二、三台走行してきたため、同車をやり過ごすため、(優先道路)の中央線手前付近で停止したところ、その約5秒後、Aが運転(略)する普通自動二輪車(以下「A車」という。)が被告人車の運転席扉の後部付近に衝突し、(Aが)公訴事実記載のとおりの傷害を負う本件事故が発生した。
〈4〉 本件事故発生の際、被告人車が停止していた位置は、(優先道路)の中央線側の車線上で、同車線を塞ぐかたちになっていたが、被告人車の右後方である歩道側の車線には、A車が十分通行できるスペースが残っていた。
〈5〉 被告人車は、衝突箇所である運転席扉の後部付近のほか、右側後部の扉付近が大きく凹んでおり、また、衝突地点の手前から約17メートルに渡り、A車のスリップ痕が(優先道路)の路面上に印象されていた。なお、(優先道路)は、(右)方向から本件交差点に向かってほぼ直線であり、(衝突地点は)約83メートル離れた地点(略)からでも十分視認することができた(略)。
(略)。
(2) (略)
被告人車は、左右道路から本件交差点に走行してくる車両が途切れるのを待って右折を開始したところ、(左)方向から車両が二、三台走行してきたため、一時停止を余儀なくされたことに照らすと、検察官主張のように車両が連続して進行してきていたかはともかく、左方向からそれなりの交通量があったものと認められる。
(略)
3 争点
弁護人は、被告人には過失がないとして無罪を主張するところ、以上の認定事実を前提にすると、本件の争点は、結局のところ、被告人が、被告人車を運転し、2回目の一時停止地点から右折すべく発進する時点ににおいて(優先道路)の中央線手前付近で一時停止をした際A車が被告人車に衝突することを予見できたかどうかという予見可能性の有無であると解される。
4 当裁判所の判断
(1) 上記の予見可能性の有無を判断するについては、A車の進行状況が重要な事実であるから、まずこの点につき検討を加える。
ア 前記認定のとおり、〈1〉衝突地点の手前からA車のスリップ痕が約17メートルに渡って印象されていること、〈2〉本件事故当時(優先道路)の路面は乾燥状態であったこと、〈3〉被告人車は、運転席の扉から右側後部の扉にかけて相当程度損傷を受けていることなどの事実を併せ考慮すると、A車は、制限速度である時速60キロメートルを上回る速度で進行していたことは明らかである。
イ (略)そうすると、仮に、A車が本件事故発生前時速約80キロメートルで走行していたとしても、(約83m手前で)被告人車はすでに本件交差点内で一時停止していて容易に発見できる状況にあり、Aが、その時点で被告人車を発見していたとすれば、制動を掛けて被告人車の手前で停止するか(略)、あるいは適宜速度を調節した上ハンドル操作をして被告人車の後方(歩道側車線)を進行するなどして、被告人車との衝突を回避することは十分可能であったものと認められる。
ウ 以上検討したところを総合すれば、A車は、本件事故発生前、制限速度を大幅に上回る高速度で走行しつつAが進路前方の注視義務を怠ったか、もしくは、制限速度を超える速度で走行しつつAが進路前方の注視義務を著しく怠ったか、いずれにせよ通常予想できない異常な走行をしていたものと認めざるを得ない。
(2) 予見可能性の有無について
ア 以上を前提として、本件の争点である予見可能性の有無について検討すると、検察官は、要するに、被告人は、2回目の一時停止場所から再発進して右折進行するに当たり、本件交差点内で右折を完了することなく停止するようなことがあれば、A車の進路を塞ぎ同車が衝突することについて予見することができたと主張するのである。
イ ところで、優先道路と非優先道路とが交わる交差点において、非優先道路を進行する車両が優先道路に向かって右折する場合、交差点内に進入する際には徐行した上、優先道路を走行する車両の進行を妨げてはならない義務がある(道路交通法36条2項、3項参照)。したがって、非優先道路を通行する車両の運転者において、右方から交差点に向かって走行する車両を確認した場合には、交差点内への進入を差し控えて、右方から進行してくる車両の走行を妨げてはならないことは明らかである。
ウ また、前記説示したとおり、当時(優先道路)の左方向からはそれなりの交通量があり、しかも、被告人車は、実際に、左方向から車両が二、三台走行してきたために本件交差点内で一時停止を余儀なくされたことに照らすと、被告人の左方の安全確認が必ずしも十分でなかったことは否定できない。
エ しかしながら、先に検討したとおり、〈1〉被告人は、本件交差点進入前に右方の安全を十分確認し、(右)方向から本件交差点に向かって進行してくる車両が存在しなかったことから本件交差点内に進入しており、少なくとも右方から進行する車両の進行を妨害しないよう配慮を尽くしていること、〈2〉本件交差点の(優先道路からの通しは)かなり良好であり、(優先道路)を進行する車両が本件交差点内に一時停止している被告人車を発見することは、かなり遠方からでも容易であったこと、〈3〉被告人は、本件交差点内において、被告人車右後方の歩道側車線上に、A車が安全に通過できる余地を残して停止していることなどの本件における事実関係の下においては、被告人は、2回目の一時停止場所から再び発進する時点において、通常予想できない異常な走行をしていたA車が、右折すべく(優先道路)中央線手前付近で一時停止した被告人車に衝突する可能性があることまで予見することはできなかったというべきである。
 なお、被告人の左方の安全確認が不十分であったことは前述したとおりであり、そのため、被告人車が本件交差点内で一時停止を余儀なくされ、結果的にA車が被告人車に衝突するに至ったことは否定できない。
しかしながら、被告人が、2回目の一時停止地点から再発進する時点において、(優先道路)中央線手前付近で一時停止した際右方から進行してくるA車が被告人車に衝突することを予見することが不可能であったことは上記のとおりである。また、A車においても、優先道路を通行していたとはいえ、本件交差点に進入する場合には、同交差点の状況に応じて通行車両等に注意し、できる限り安全な速度と方法で進行すべき義務は免れないのであって(道路交通法36条4項)、被告人において、これを著しく逸脱したA車のような異常な走行をする車両があることまで予見すべき義務はなかったというべきである。したがって、被告人の左方の安全確認が不十分であったことをもって、被告人に本件事故発生についての予見可能性・予見義務を認めることはできない。
オ (検察官の主張)この点に関する検察官の主張は理由がない。
カ (検察官の主張)いずれも被告人に本件事故発生についての予見可能性を認める根拠となるものとはいえない。
(3) 過失に関する結論
以上のとおり、本件事故発生当時の状況に鑑みると、被告人は、2回目の一時停止場所から右折すべく再び発進する時点において、異常な走行をしていたA車が、本件交差点内で一時停止中の被告人車に衝突する可能性があることまで予見することはできなかったと認められるから、このような予見可能性があることを前提に被告人に公訴事実記載のとおりの注意義務があるとする検察官の主張は、その前提において是認できないものといわなければならない。したがって、被告人に公訴事実記載の過失は認められない。
5 結論
以上の次第であり、本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるから、刑事訴訟法336条により、被告人に対し無罪の言渡しをする。
 
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。